ART出生児の発育・発達に関する研究結果(その一)

結果

先天異常

出生時および1歳6ヶ月時における先天奇形の発見数

出生時および1歳6ヶ月時における先天奇形の発見数

体外受精で生まれた子どもは、自然妊娠で生まれた子どもに比べて先天異常が1.4倍ほど多くなる、というデータが海外で得られています。残念ながら、この研究では体外受精で生まれた子どもすべてを調べているわけではありませんので、実際の先天異常の発生率が高いか、低いかはわかりません。

ただ、生まれた時にはわからないような小さな異常が、その後にどの程度見つかるか、ということについては、1歳6ヶ月で見つかっている異常のうち、どの程度が生まれた時に報告されているか、という観点で見ることができます。1歳6ヶ月でなんらかの先天奇形(先天異常症候群)があると言われているこどもは、体外受精で生まれた子どものうち一人のお子さんとして生まれた2026人の49例(2.4%)でした。そのうち、生まれた時にクリニックから産婦人科学会に先天奇形として報告がされている子どもは16例でしたから、1歳6ヶ月で先天異常症と考えられた子どものうち、生まれた時に診断がついたのは約1/3にすぎないということになります。一方、同じ1歳6ヶ月の時点で先天異常と考えられた子どもは、調査に協力していただいた自然妊娠で生まれた子ども671例中の12例(1.8%)、体外受精以外の不妊治療で生まれた子ども725例中の8例(1.1%)であり、すくなくとも調査に協力していただいた方たちの中では、体外受精で生まれたお子さんと自然妊娠で生まれたお子さんの間に異常を持っている率の差は統計学的にはありません。(なお通常、生まれてきた子どもの3-5%が何らかの先天異常を持って生まれてくると言われています。)

また、これらの異常発生が、何らかの体外受精技術と関連しているかどうかを、様々な因子(母体の治療開始時の年齢;不妊治療の適応、卵巣刺激法、精液所見、胚移植時の発育段階、黄体期管理、性別、出生体重)について検討しましたが、特別に関係している因子は有りませんでした。表5に、実際に報告のあった先天奇形を列挙してあります。

体外受精、不妊治療、自然妊娠で生まれた子で見られた先天奇形

体外受精、不妊治療、自然妊娠で生まれた子で見られた先天奇形

※1: 3%程度の確率で体外受精由来の子どもが交じっていると考えられますが、統計学的には無視してよい数で、結果には影響しないと考えられます。

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